ヒューエルマミヤ→テンプルスタイルB♂
左浦弥鳴石(さうらび なるい)→スチューデントスタイルB♀
その子は事もなげにまた明日と言う。俺はまた明日と返す。
13班になってから、彼氏と別れちゃったの。そう彼女は言った。ナルイという名の少女は、東京では学生だそうだ。
うんうん、それで?と俺は聞く。東京に来てからも、ルシェの俺は当然その辺の街中をうろつくわけにはいかない。でも、興味深い話が沢山がこの時代にはあるから、一番話が面白い佐浦弥鳴石とよくおしゃべりをする。
「彼氏って言っても、2週間くらい前に付き合い始めたんだけど……魔石の練習にばったり出くわしたら逃げちゃって、でも偏見はよくないからそのまま魔法をかけてみたら泣いて別れてくれって言われちゃったの」
回復魔法だったのに。と果物の飲み物を管で吸った。それは君が悪いような気がする。
「その前の彼氏君は?魔石について理解があるってこの間言ってたけど」
あー、と長くため息をついて氷だけになった飲み物をまた吸った。変な音がずごごご、と鳴る。
「……動物の絶滅とか、その種族の運命でその種族のせいだって言ったから」
ナルイは俺を見た。資料室で教わった、絶滅危惧種。ルシェだって広い考えで言えばそう。この時代からとても近い過去にだって、いろんな動物がいなくなった。それは肉が美味しかったから、毛皮が綺麗な色だったから、角が美しい装飾品になるから。
俺たちは魔物を狩りながら、時に素材を剥ぐ。役に立つから。
俺たちの故郷は、とても役に立つ石を掘っていって、そして取り尽くした。
俺たちは、掘り尽くされる側だった。
「ヒューエル君たちが今絶滅してること。私達がそれをどうにかしたくてずっと頑張っていても、そういうことだったことを私たちは覚えている。……だから、……」
そう、言葉を紡いでナルイは唇を噛んだ。
「……星の廻り、石の呼吸。そういうのを俺たちルシェはナルイに教えたよ」
「ナルイは今まで、それの名前を知らなかった。だから、役に立たなくていい普通のガクセイだったんだよね」
「ナルイは、今は役に立つ。それは、ナルイ達が滅びることにつながると思う?」
ナルイは、すごく痛そうな顔をした。何か言い返そうとして、俺の顔を見て止めた。
テーブルから身を乗り出して、ナルイの顔をもっとよく見ようと思った。どこが痛いのか、それって俺と同じくらい痛いのかな?
ナルイの目を覗き込んだら、ナルイが俺の腕を掴んだ。
「……答えは、もう少し……もう少し、待って欲しい。だから……ヒューエル、ごめんなさい……」
にっこりと笑って、びっくりさせてごめんとナルイを大事にハグした。ちっちゃなナルイの背中は、すごくすごく俺を痛くしてくれた。