間宮緋色→バトラースタイル♀ 黄色
間宮群青→バトラースタイル♀ 青色
握りしめた鉄からは小さく煙が立ち上る。火薬のにおい、大きな音で少し痺れた鼓膜、頬からぽたりと垂れた液体を無意識に拭ってそれが血であることに気がついた。
「よくできたね。きっとじきに動くものも撃てるようになれる」
ロープで縛られ顔に袋を被せられたそれはもう何もしない。きちんと袋の中を撃ち抜こうとしたが、重さに手元が狂って幾つもよけいな胴体を撃ってしまった。噴き出した血潮が床を汚していく。
ただ、お母さんとお父さんはその程度でも十分に期待通りだったようだ。私の頬をハンカチで綺麗に拭いて、掃除をする人を呼んでいた。
今日は、とても良い行いをした。
お母さんとお父さんは、私を仕事に連れて行ってくれるようになった。二人の仲間たちと一緒にどこかへ向かい、私は物陰から這い出て助けてと叫ぶ。ターゲットが私に近寄って、爆ぜる。
褒めて欲しいと思っていたのはすぐに飽きた。親が子を褒めるのは当たり前だ。それよりもう少し欲しいものがあった。
お母さんとお父さんは聖なる戦いをしていた。復興を進める政府が作る建築物は、竜が作り上げた完全な世界に建てるバベルの塔なのだ。
崩すために造られた塔を、私はまた一つ壊す。
その塔には、子供が沢山いた。従業員の子を預かっていたのだろうか。
的は小さかったけれど、簡単に当たる。ひとつひとつ丁寧に片付けて、私はお父さんに連絡をする。
通信を切った後、静寂の中に小さな呼吸音がした。撃ち漏らしがあったのだろうか。転がる頭達をもう一回撃っていく。
折り重なるように倒れた山が邪魔で、私はそれを退かした。呼吸音はここからだ。中に埋もれていたものを撃とうとして、残弾が足りないことに気づいた。装填をしながら、仕損じないように重なった胴体をすべて足で退かす。弾丸が勿体無いんだけどな。そう思いながら顔を見せた呼吸の主を検めた。
それは、とてもとても美しい緋だった。幾人もの命に染まった生が、青褪めた頬を緋色に見せていた。
私は装填をする手を止めた。綺麗なその少女の顔を目に焼き付け、そしてもう一度潰れない程度に死体を積み上げて姿を隠した。あたかも、掘り起こした宝石を埋め戻すかのように。
そして、私はお父さんに終わりましたの報告をした。お父さんはよくできましたと私を褒めて、書類を捲っていた。次はどのくらいが合うかな。そう新しい靴を選ぶように紙を見比べていた。
私はあの女の子を忘れられなかった。貰った仕事を続けながら、ずっとあの日の生き残りの消息を探していた。あの日、私を灼いた夕陽をずっと求めていた。
そうしているうちに、私たちのファミリーは公安に一人残らず捕まっていた。誰がやらかしたのか、誰を切ればいいか、残念ながら日本の警察は取引の仕方がわからないみたいだ。
私は偉い人のお家に引き取られた。異例中の異例なんだって周りは言っていた。私を染める異能は狩るものとして特別だと噂が小さく漏れ聞こえてきた。
そして、あの子がいた。
緋色の頬を小さく笑みの形にして、使用人のエプロンドレスに身を包んで、そしてようこそと私を迎え入れた。
私は緋色に迎えられた。侵入を許された。
それは、まさしく引き当てた当たりくじ。一枚ずつ千切って捨てたこよりの束の、赤く塗られた運命だった。
落ちていく私は、夕陽を踏みつけて海を目指す。一瞬の逆さまの視界は、靴底の下になじった太陽に胸いっぱいの恋と一欠片の妬みを。
瞳を緋色に染め上げて、あなたの瞳に私の群青を刻む。